依頼目的の真偽を見極める

調査依頼を受ける際に探偵が最も重視しなければならないのが「調査目的に虚偽や詐称が無く、違法なことに調査結果を用いないかを見極めなければならない」事です。

しかし、この見極めは実際のところなかなか困難です。

依頼人が調査結果を犯罪など違法な事に利用するとは絶対に言うはずがなく、いろいろと質問しながら依頼人の話の信憑性を探るしかありません。

例えば、ある男性から結婚を前提に交際している女性の素行調査をして欲しいとの依頼。

どうも他の男性の影があるという。

1週間も調査して貰えればと言うので料金を説明すると何も動じる事なく、すぐにでも調査をして欲しいとの事。

探偵にとっては「美味しい」依頼と思ってしまいます。

女性の情報を開示して貰おうと尋ねるも、送っていっているマンションは知っているが部屋番号は知らないという。

勤務先についても東京の神田でOLをしていることは知っているが勤務先会社名は知らないという。

結婚を前提としている彼女とは到底思えない事が話をしているといろいろと出てくるのでおかしいと思い始めます。

男性が一方的に好意を寄せているだけなのではないか?という疑問が出てきます。

しかも他の男性の浮気というかこの女性についていろいろと知りたいために調査したいのではないかと疑ってしまいます。

では自宅や勤務先もはっきりしないとなるとどこから彼女を尾行調査すればよいのか分からないと尋ねると、依頼人と彼女がデートをして男性が指定したホテルから出るのでその後を尾行して欲しいというのです。

当然、ホテルから出てくると言うことは間違いなくホテルに入ると断言できるのか?

むしろホテルに入る前に待ち合わせしている場所から調査をしたいと告げるもホテルに何時間いるかも分からないからホテルで待って欲しいと執拗に拘ってくる。

「彼女の写真は何枚かあるし探偵ならできるでしょう。待ち合わせしてからだと食事したりしてからとか無駄な時間が長くなってしまう。」と言い始める始末。

こちらも「彼女にも予定があったり、行きたい場所があって移動したらそのホテルに入るとは限らないのでは?」と更に突っ込むと男性は「絶対にそのホテルに来る」と。

「ホテルに来る?どういう事ですか?そのホテルで待ち合わせしているということですか?」更に突っ込んで聞くと男性が段々と苛立ってくるのが分かります。

「こちらは調査料金という安くもないお金を支払うのだし調査をする気があるのか?黙ってこっちが指示した通りに調査すればいいんだよ」と逆切れしてきました。

しかし、調査依頼の目的が不鮮明であり、正直、デリヘル嬢と客との関係にしか見えてきません。

もしデリヘル嬢に対して家を突き止めた場合、この男性は何をしたいのか想像ができます。

まずは風俗店を通さずに私的で会うことを考えているのか、結果、お店を通さずに安くサービスを受けたいと思っているのかもしれません。

この程度なら良いのですが、付きまといや待ち伏せなどのストーカー行為をしようとしているのか、更に考えれば女性に対して脅迫、恐喝をしようと考えているのではないかという危惧があります。

男性の思い通りに行かなければ傷害や殺人事件へと最悪のケースへ変化することも考えられるのです。

探偵に対して結婚を前提とした相手の素行調査はよくあるケースですが、こういった相談は余りにもおかしいと言わざるを得ません。

このままこの依頼を受件してしまい、結果を報告したとすると犯罪に利用され兼ねない、いや、このケースではほぼ犯罪に利用される可能性が高いと判断します。

もし犯罪に利用し当探偵事務所がその情報を提供したとなると警察からも事情を何度か聞かれる事となり、公安委員会から呼び出され、審議、数日間の営業停止処分という場合や廃業命令もあります。

探偵事務所での相談は依頼人の悩みや不安の原因となる話を信じて依頼を受けるのですが、相談者の調査目的に虚偽や詐称が無いことをよく見極め、安直に受けてしまうと相応のリスクを被らなければならないという事もあるのです。

調査目的については正直に話をして頂き、その内容において犯罪などの背景があると感じられたら調査依頼をお断り致します。

しかし、虚偽を申告された場合、探偵が全てを見極める事が出来ない可能性がありますので、御依頼者にはストーカー行為など犯罪目的から公序良俗に反しない、差別にも利用しないという「誓約書」を必ず作成して頂いております。

この誓約書作成は探偵業法で義務付けられておりますので、ご協力のほどお願い致します。